全6コマ程度 受講料24,000円
このページのPDFをダウンロード 2023年2月8日作成
目標と背景説明
デカルトの「方法序説」は、座標の発見を初めとする彼の科学論文の序説として、広く哲学を含めた彼なりの真理を探究する方法を一般に解説した書物です。その主な方法はたった4規則余り、2ページほどの分量です。しかし、その単純さ、核心を突いた方法論にこそ価値があり、その後の多くの著名な科学者、学者の基礎教養としての役割を果たしてきました。
それはつまり、現代文明を基礎づける学問、とりわけ科学において「方法序説」が基礎教養となっていることを意味し、現代の学問入門の書でもあることを意味します。上記の「4規則余り、2ページほどの分量」をきちんと理解することができれば、数学、科学の内容で取り組み方が分からないということはなくなります。
デカルトの「方法序説」は、すなわちロジカルシンキングの基本であり、様々な真理や真実の発見の方法であり、多くの仕事や勉学の場面でその方法論を生かすことができます。それがデカルトが近代合理主義精神の祖と称される由縁となります。
改めて教養を深めたい方、学問を志す若い方、一緒に探究の扉を開きましょう。
使用する教科書
「方法序説」デカルト著, 谷川多佳子訳
一般の書店、オンライン上の書店で入手することができます。
紙の文庫本をご購入ください。500~600円ほどです。
授業計画
対話形式ですので、授業計画をこなすことよりも楽しくじっくり深く考えることに重きをおいて授業を進めたいと思います。
1.(授業1コマ)
「方法序説」を解説する前に、論理の基本を学びます。
論理の歴史、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ユークリッドに軽く触れ、探究と疑問、命題、推論、演繹、疑問から根拠を見つけること、その逆の根拠から結論を導く関係が推論であることを解説します。
次回に向けて、「方法序説」の解説箇所p.27~29を読み込んできて頂きます。もちろん、他の個所も読んで頂ければなお良しです。
2.(授業1コマ)
p27~28のデカルトの論理学、数学に対する考え方を解説します。この授業では主に論理学の話となりますが、「4規則へ絞る」ということがポイントになります。
特に、そこで言及されている三段論法とは何かを万有引力、生物系統図、数の分類、プログラミング(クラス)などを例示して解説し、その役に立つ三段論法すら除外されていることの重要性を指摘します。
次回に向けて、再び4規則を読み込んできて頂くために、簡単に概説します。
3.(授業1コマ)
第一規則は、一般に明証性の規則とも呼ばれ、デカルトの探究法の中で最も大切な規則となります。何を真として認めるのか、どうして第一規則で良いとデカルトは考えているのかまでを含めて一語一語を丁寧に読解していきたいと思います。
主観、客観、普遍性、理性とは。
知識は鵜呑みではなく「自分」の判定が必要、ではなぜ「自分」の判定で良いというのか?
この第一規則は、デカルトの方法的懐疑、批判精神(クリティカルシンキング)とも呼ばれる真理探究法の核心でもあります。数学の命題、科学的な事実、裁判での真実、政治やジャーナリズムなど、これらの正しさの判断がどのように確定されるのかがここにあり、現代社会の制度的な枠組みを理解するための基礎になります。
考えてみよう!ー理性と第一哲学原理「われ思う故にわれあり」(p.46)の関係
考えてみよう!ー現代の数学・科学理論の正しさとは?公理・原理・仮説、演繹、実験(参考:p.100)
考えてみよう!ーデカルトとソクラテスの原理に対する確実性の捉え方の違い、現代数学はデカルト寄り?ソクラテス寄り?
4.(授業1コマ)
第二規則は、分析の規則とも呼ばれます。これは現代社会を支える機械の構成法にも通じる概念です。なぜ問題・命題の分割が機械の分解、あるいは対象の分解、つまり、分析に通じるのかを詳しく説明します。(言葉、記号、図の役割、情報とは?認識とは?)
第三規則は、総合の規則とも呼ばれます。第二規則によって分析・分解した対象をどのように総合・再構築するのか、なぜそのように考えるのかを解説します。数学や科学の理論の演繹構造についてユークリッド幾何学やニュートン力学を例示しながら解説します。
考えてみよう!ー第三規則を他の学問にも適用してみてください。命題の取り方を工夫しましょう。例えば、機械ではどうなる?法律ではどうなる?
参考:モンテスキューの「法の精神」や日本の法制度における法原理と演繹構造
5.(授業1コマ)
第四規則は、枚挙の規則とも呼ばれます。見落としや誤りがないことが正しさ、論理の基礎であること、つまり、一部分が正しくても全体の中で一つでも誤りがあってはならないことを「矛盾」の理解を深めながら解説します。
矛盾とは、真偽の両立する命題です。一つの命題でも矛盾すると理論のすべての命題が矛盾します。
くわえて、全体を見渡すことの大切さ、また、一つの対象を全体から見直すことの大切さを解説します。それはつまり、一つの対象を多面的に多様に解釈することの大切さに通じています。
考えてみよう!ー全体は部分からできている?部分は全体からできている?言葉の定義を遡ってみましょう。(入れるネジ穴がないネジはネジ?言語のない言葉は言葉?)
考えてみよう!ー新しい法則とは何か?発見は異なる分野の繋がりを見つけること?一つの対象の複数の見方?
6.(授業1コマ)
p.29のデカルトの真理探究方法の核心部分、演繹の重要性をじっくりと解説します。なぜデカルトが演繹で到達しえない真実はないと思い描いたのかを含めて議論したいと思います。
つまり、演繹で到達しえない真実とは何か?を一緒に考えます。
考えてみよう!ー関係あるもの、関係ないものとは何か?一切の関係のないものはある?ない?
全6回を振り返り、質疑応答の時間をたっぷりと取りたいと思います。
※時間は足りないくらいかと思いますが、時間が余った場合にはデカルトが座標発見に至った思考過程の概説(p.30~31)や有名な第一哲学原理「われ思う故にわれあり」(p.46)の概説を行いたいと思います。
※授業内容が変更される場合もあります。