みなさんは、どんなときに何を「あっ分かった!」、「理解できた!」と思うでしょうか?
自分がどんなときに何を理解できたと思っているかを知っておくと勉強のやり方が分かり、やり方が分かれば効率の良い勉強につながります。その基本を今回は説明したいと思います。
疑問
まず、考えが進まない場合には、何を知りたいのかをきちんと文章に書くことが大切です。文章に書くことで考えていることが明確になったり、初めと終りで変わってしまったりという失敗が少なくなります。
教科書を読んでいるときであれば、これを今考えているんだという文章の個所を明確にしながら読むということです。この「何かを知りたい」ということを疑問と言います。教科書を読みながら疑問が浮かんだ場合には、それを余白かノートに文章にして書き留めると良いと思います。
教科書に書かれている文章や自分の考えが正しいかどうか分からない場合、「正しいかどうかを知りたい」わけですから、それも疑問と言います。そのような場合は、「?マーク」だけでも良いのです。自分が正しいと判断しているかいないかを明示しておくことが大切です。
命題
何かの疑問を初めて持ったときには、あまりに疑問が漠然としていてその答えの候補すら浮かばないかもしれません。そんなときには、先生に質問するか、教科書をさかのぼって復習するか、別の教科書や本を調べると良いでしょう。自分で復習や調査する場合には、できるだけ全体を幅広く見渡して、色々な意見を参考にしながら、それから次第に答えの候補を絞っていくのがお勧めです。
あるいは、それでも分からない場合には書き留めた疑問をそのままに頭の片隅において、時々引っ張り出して考え直してみるのも良いと思います。いずれにせよ、その過程で疑問に対する答えの候補が出てくるはずです。その答えの候補もきちんと文章にしてみることが大切です。
そして、その答えの候補となる文章のように、「正しいか正しくないのかを判断をしようとする文章」のことを命題と呼びます。教科書に書かれている文章も正しいか正しくないのかを考えながら読んでいるので、その多くが命題です。特に数学の場合は、定理、公式などを正しいのか正しくないのか、どうして正しいのかについて考えるのが勉強ですので、それらはすべて命題と言えます。
推論
数学は、命題に対してそれが正しいか正しくないかきちんと疑問を持って読むことが大切です。そうすると、正しいかどうかの答えとなる根拠が必要になります。あるいは、その命題をより具体的な事柄に当てはめて正しそうだと予想できる場合もあるかもしれません。
前者は、根拠が正しいからその命題が正しい、後者は、その命題が正しいから具体例が正しい(あるいは、その命題を正しいとしたら具体例も正しい)、という関係を持っています。ここで、根拠も具体例も正しいか正しくないのかを判断をしようとする文章として表わせますので、どちらも命題といえます。つまり、どちらもある命題が正しいから別の命題が正しいという関係を持っていることになります。
この「ある命題が正しいから別の命題が正しいという関係」を推論と言います。つまり、疑問を持って根拠を考えるということは、この推論と逆向きの考えということになります。
そして、考えるということは、ほとんどの場合、正しいか正しくないのかを気にしながら考えますので、この推論の流れを行ったり戻ったりすることに他なりません。これが冒頭で挙げた「あっ分かった!」、「理解できた!」の本性になります。つまり、容易に推論の流れを追えるように考えを整理できたときに「理解できた!」と感じるといえます。
この考える基本、論理の基本を身に付けて数学やそれ以外の勉強をすると、とても効率良くそして深く内容を理解することができます。分からないことがあれば分かるところまで推論の流れを戻ってみようとか、本当に正しいのかもう少し推論を進めて具体例をもっと見てみようとか、勉強の方針が付くようになるからです。例えば、試験問題を解いて答えるときもまったく同じことです。
なにごとも勉強を進めると様々な内容が出て来ますが、最も大切なのは基本となります。以上の命題、疑問と推論は論理の基本といえる重要な内容で、まずはこれをきちんと身に付けることで大きな成果を期待することができます。
講師 瀬端隼也