新学期にあたり高校数学の勉強の仕方について

今回は、4月に入り新たに数学の勉強を始める方も多い時期かとおもいますので、数学の勉強の仕方について解説してみたいと思います。

「新学期」「高校数学」とタイトルにありますが、一部は学生、高校範囲に限った内容もありますが多くは数学一般の勉強の仕方にも当てはまる内容になると思います。

大学生や社会人の方は、成績や進学あるいは受験を抜きにして純粋に数学を楽しみあるいは身に付けて役に立てたいという余裕のある方が割りあい多いかと思います。一方で、中学2・3年生くらいから高校2年生までの高校数学を学ぼうとする学生の方は、同様の気持ちで取り組むことが基本ではありますが、やはり、成績や進学あるいは受験を抜きに勉強を進めることは難しいものです。

そこでまずは、受験等の試験対策が必要な場合の数学の勉強の仕方についてから解説したいと思います。

受験等の試験対策が必要な場合

なにより第一に言えることは、受験対策といって数学の勉強の仕方の基本が変わるということはないということです。受験対策の最も大切なことはなにかと聞かれれば「高校数学の教科書をきちんと理解する」ことと言えます。

高校数学の教科書をきちんと理解して、基本的な問題演習をこなす、そして応用問題で分析力や論理力を養う、この順番を間違えずに基礎から磨いていくことが受験対策となります。特に、日本の競争率の高い大学の受験対策となると、この三つの水準が前者ほど高くなります。しかし、高くなるだけでそれ以外のことは何もありません。

例えば、東京大学の過去問を分析すれば、「高校数学の教科書をきちんと理解して、基本的な問題演習をこなす」ことが大切で、そこに多少の「応用問題で分析力や論理力を養う」ことで合格点に届く水準になることが分かりますし、逆に、「高校数学の教科書をきちんと理解して、基本的な問題演習をこな」せなければ合格点には届きません。基本的なことを時間内に正確に計算できるか、まずはそこを問わざるを得ないからです。(参考:高校数学マスター:過去問の解説と解答

受験等の試験対策が必要な場合には、高校数学の勉強を少し始めたあたりで目標とする試験や大学の過去問を教科書を開きながら解いてみることをお勧めします。そうすると、教科書をどこまできちんと理解して知識を使えるようにならなければならないか、がはっきりと分かりその後の勉強の指針となります。上記の参考ページを読んでいただくと他大学についてもおおむねどの程度の水準かを想像することができるようになると思います。

一般的な数学の勉強の仕方

一般的な数学の勉強の仕方が試験勉強と異なるか、というと基本的に「数学の教科書をきちんと理解して、基本的な問題演習をこなし、そして応用問題でさらに理解を深める」ことは変わりがありません。ただ、試験前に教科書を総復習して知識の定着を取り戻したり、過去問になれたりすることは違うところかもしれません。

問題は、「教科書をきちんと理解するための読み方、探求の仕方」にあります。たしかに中高時代に高校数学をまんべんなく受験に通用するだけの水準にすることは限られた時間を考えればそれだけで大変なことです。しかし、知識の習得と知識の探求法の習得は切っても切り離せない関係であり、どちらが先でどちらが後ということもないのです。

バランスよくその両者を育てることで教科書をきちんと理解する論理的な思考力、ひいては難しい試験で問われる、あるいは大学や社会で必要とされる論理的な思考力が身に付いて行きます。そのため、後述する勉強の仕方を実践すれば教科書の理解は深まり問題演習も楽になり、中高生の場合には早めに準備をして時間的な余裕を持って計画を立てさえすれば、結局は試験対策にも役に立ちます。

ちなみに知識の習得と探求法の習得の違いにはこんなエピソードもあります。著名な日本人数学者の高木貞二先生は、自身が類体論という大理論を打ち立てるきっかけは第一次世界大戦で欧州の情報が入ってこなくなったことに寄り、そうでなければ欧州の数学を後追いするのに忙しく類体論は生まれなかったかもしれないと。また噂程度の話ですが、これも著名な日本人数学者の小平邦彦先生をアンドレ・ヴェイユが評して、大変な能力を持っている小平が独自のアイデアを出すのがこれほど遅かったことに驚かされると。

日本で最も著名で優秀な二人の数学者でさえ、このようなエピソードが残っているのですから優秀な成績で大学に入ってから研究では伸び悩んでしまう日本人の多さはある程度の共通認識で、広く社会的なイノベーションや社会学的な議論においても能力のわりに創造性が少ないという問題意識が一般にあります。それは学問的な土壌、特にソクラテスやデカルトなどの合理主義的な学問の伝統が浅いための現象であることは間違いないだろうと思います。

試験では正確に早く多くの既存の知識を用いることが求められていますが、研究というのはたっぷりとした時間の中で根気強く考えを深めて新しい知識を発見することが求められます。考えが早いことは有利なことも多いですが、不利なこともあります。何事も適材適所で自分の才能に合った仕事、研究というものがあると思いますが、特に、前提を問い自然への深い洞察を伴った基礎的な発見のためには計算が早いことやたくさんの知識は必要ないと言って良いかもしれません。極端な例ですが重要な例として、例えばどんなに計算が早くとも座標の概念(デカルト)や集合の概念(カントール)の発見はできないでしょう。

教科書をきちんと理解するための読み方、探求の仕方

教科書をきちんと理解するためには、まずは、疑問を持って教科書を読むことです。ただ教科書の字ずらを追うのではなく、本当にそうなのかな?と考えて自分で計算や証明をして確かめていくことです。最初は時間がかかるかもしれませんが、結局はその方が理解が早くなり自分の頭で考えないで読む人よりも考えて読む人の方が教科書を読むのも早くなっていきます。

そして、数学ノートを作って自分が疑問に思ったこと、考えたことを書いてください。日付や教科書の該当箇所はきちんとメモしておくことが大切です。教科書をきちんと読めば読むほど、そして後述する探求をすればするほど、このノートが将来の役に立ち、あるいは財産にさえなることもあるはずです。

さて、疑問に感じた箇所があって数学ノートにメモをしてある程度、自分の頭で考えて分からなければ、それはそのままにしても良いですし、あるいは、自分の関心が強ければ調査をしてみてください。

まずは、インターネットを検索して疑問を解消することができるか試してみるのも良いと思います。一方で、時間を作って図書館に行き数学コーナーを見つけて関連の書籍を探し出すことの方が大切です。良い書籍を見つける訓練にもなりますし、何より良い書籍を見つけると一気にその分野の理解が深まるということを知ることが大切です。

このような調査をすることの最大のメリットが発揮されるタイミングは、数学の勉強ではよくあることですが教科書を読んでもさっぱり理解ができない、一歩も前に進めないというときです。もちろん、じっくりと時間をかけて自分の頭で考えてみることこそが第一に大切ですが、おおむね「一歩も前に進めない」場合には、前提となる関連知識の習得が欠けているからです。あるいは、教科書と方向性や相性が合わないか、解説を省いている偏っている、ときには著者も人間ですから間違いもあります(インターネットはもちろん、皆が読んでいる立派な本でもあります)。

そのいずれの場合でも調査でその教科書の背景となる学問の全体像を知ることが理解への第一歩となります。さらに、様々な書籍を比較すればそれぞれの著者や教科書で同じことでも同じように解説していることはほとんどないことを知ることにもなります。その多様な視点を知ることが理解を深めてくれます。調査で見つけた書籍やその内容で面白かった箇所も数学ノートに付けていくと良いでしょう。

こうした探求をさらに深めるためには、良書を選ぶことです。数学にも良書がありますし、探求方法にも良書というものがあります。

探求方法については、「ソクラテスの弁明」と「方法序説(デカルト)」を一度は読み込むことをお勧めします。これによって勉強の仕方が格段にブラッシュアップされますし、数学ノートも探求と発見のノートに化ける可能性が高くなります。

高校数学で探求することをお勧めする分野

高校数学であれば、将来役に立つ、あるいは受験対策として有効になるのは、「図形と方程式」「微分積分」の分野を探求して理解を深めることです。この分野は、前者がデカルト、後者がニュートンにより開拓され、科学の柱となる分野であるためにどのような分野に進むにしても無関係な分野がないからです。おそらく大学受験をして一校の試験でこのどちらも触れずに済む試験は、ほぼないのではないかと思います。

次に探求をお勧めするのは、、様々な分野がそれぞれの魅力を放っていて順番を付けるのは非常に難しく、各自の関心に応じて探求を深めることが最も大切なことなのですが、あえてお勧めを挙げると、初等幾何学、初等整数論、確率論などの理解を深めると良いのではないかと思います。

初等幾何学は、ユークリッドの原論に目を通してみることが大切です。この本は、科学理論の原型となっており、ニュートン力学もアインシュタインの相対性理論もここが出発点になっていて、論理や理論あるいは科学とは何かを理解することができます。論理的な思考力も飛躍的に向上します。

初等整数論は、数学者の先生方にとって揺り篭のようなものであり、整数という数学の花の根っこにあたるところでもあり、多くの先端理論の研究の出発点でもあり、フェルマー、オイラー、ガウスという巨人たちと前提知識も少なめに触れ合うことのできる驚きと発見の宝庫でもあります。そのため、数学科の強い大学の受験問題にも難易度の高い問題が出てくることが多い分野なのではないかと思います。

確率論は、やはりフェルマーとパスカルという天才が創始した、そして日本でも伊藤清先生が先端研究を先導した分野であり、何より現代科学においてますますその重要性が高まっていることから基本を理解していると将来的に役に立つ可能性の高い分野です。そのため、これからの大学受験でも出題が多くなっていく傾向にあると思います。

まとめ

当教室では、以上のような考え方を基本にして、生徒のみなさま一人ひとりに合わせて、論理と高校数学を対話形式で解説しています。楽しみながら学ぶこと、深い理解を得ることを大切にしています。ご関心をお持ちになられましたらお気軽にお問い合わせください。

講師 瀬端隼也